fa-leanpub「13階段」読了
5月22日
「13階段」 高野和明 著 を読了した。この作品は、第47回の江戸川乱歩賞を受賞した作品で、購入した時点で面白さは約束されていた。
死刑囚だけが拘留されている、ゼロ番区に死刑執行を告げる隊列がやってくるシーンの描写から物語が始まる。その描写が、まるで今見てきたかのようにリアルに表現されていて、一気に引き込まれる。受刑者心理という、普段体験し得ない情報も、興味が上回り集中力が途切れることは無い。
物語は、このゼロ番地区に収監されている死刑囚の潔白を証明するという流れだが、問題は受刑者当人が事件当時の記憶を失っているという点。記憶が無いから反省もできない、それが反省が見られないと判断されて裁判にマイナスに働く。さらに、状況証拠としては不利なものしか存在しない。かなりの劣勢から物語がスタートする。
取り扱っている分野がシリアスで専門的な用語もちらほら出現するが、常に物語の引力が上回りほとんどストレスを感じずに読み進められる。特に中盤以降の展開は一気に読めてしまうのではないだろうか。
この作品は読む前から面白い事が約束されていたが、18年前の作品とは思えない新鮮さを伴っている点がすごい。巻末にこの作品が江戸川乱歩賞を受賞することとなった現場の解説を当時選考委員だった、宮部みゆき氏が寄稿している。いつも思うが、こういうふうに、物語とは関係ない寄稿に綴られる文がいちいち粋なのだ。短い文で誰も損をしない爽やかな印象を抱かせてくる才能に圧倒される。直近だと、「ジェリーフィッシュは凍らない」の冒頭に寄稿された市川憂人氏の ”受賞の言葉” は印象深い。