火車 / 宮部みゆき
本著者の数ある作品の中でも特出して評価が高い作品。
本著者の作品は電子書籍化されておらず、読もうとすれば書店で購入するほかない。こだわりがありそうだ。
大御所のわりに私が手にするのは初めての作品となる。古作品ではあるけれど期待はしている。
あらすじ
休職中縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。
自らの意思での刑事、本間俊介は遠失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?
いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。
山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
所感
日本がバブルに浮かれていた裏側でクレジットカード破産が多発していた社会問題にスポットがあてられている。
クレジットカード破産に至るケースにはやむを得ないと言いたくなるようなものも少なくなく、どちらかというと被害者ではないかという当時の社会の在り方に疑問を投げかけているようにも感じた。
全てを語らず幕を引くタイプのラストが印象的。
初めて読んだ小説のはずだったが、このタイプの終わり方をするサスペンスドラマはいくつか記憶があり、年代を考えると本作がオマージュされたものかもしれない。
発表から長い時間が経っているけど高い評価を維持したままだが、すべてを語らず終わる形式には好みが分かれるのではと思うところがある。