
深夜特急Ⅰ 沢木耕太郎著
本作は平成8年、およそ30年前に発行された。
どれくらいの冊数が市場に出回っているのか想像もできないけれど、ことあるごとに本作の名前を耳にする。特に、本作に触発されたことで本当にバックパッカーのような旅に出かける者は多く、過去に3人出くわしている。
遠い記憶で曖昧なのだが映像化されたものは観たことがある。しかしながら当時の私は視野の狭い田舎者のマインドに支配されていたため、話のすべてが別世界の事にしか思えなかった。
本を読むようになった頃から、いつかは読んでみたいと思っていた作品だ。
あらすじ
インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗り合いバスで行ってみたい。
ある日そう思い立った26歳の(私)は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。
途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。
マカオでは、「大小」というサイコロ博打に魅せられ、あわや・・・。
一年以上にわたるユーラシア放浪の旅が今、幕を開けた。
所感
この作品はまさに私のような団塊ジュニア世代にギリギリ刺さる作品なのだろう。
今日現在のようにスマホを持っていることが当たり前の世界では、本書が描いている冒険の心細さやワクワク感を100%の質量で受け取ることは難しいと思う。
スマホがなかった時代の海外旅行がわりと「命がけのレジャー」であった事は経験者であれば容易に思い出せるだろう。その時の形容しがたい心持ちは鮮明によみがえるはずだ。
普通の海外旅行であってもそれなりのリスクがあった時代に、安宿、破天荒な道のり、貧乏という無謀さが加わっている。その恩恵もあって、現地に漂うエネルギー感やローカルルールが日本のそれとはまったく異質であるという事がダイレクトに伝わってくる。
本作が描いている香港マカオには私も過去2度ほど訪れている。特に作品内で描かれているエネルギー感の片鱗は今でも感じることができてリアルにイメージができた。
私としては20年以上前に読んでおきたかった本だった。
簡単に情報が手に入る現代に長く身を置いてしまった事で、本作が持っている力を十分に受信できなくなっている自分を思い知らされた。







