名探偵のままでいて / 小西マサテル
SNSで話題に挙がっていたのはもう半年ほど前になる。
いつものように主に移動中にスマホで読むために購入した。
連続短編形式とライトな表紙デザインから、常に頭の中を整理しながらでないと読み進められないような難解な物語ではないのだろうと期待して購入した。
常に外界の情報に意識を向けながらスマホの小さな画面で本を読むにはこういった制限がある。
あらすじ
かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、七十一歳となった現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。
しかし、小学校教師である孫娘の楓が、身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻すのだった!
そんな中、やがて楓の人生に関わる重大な事件が……。
所感
安楽椅子探偵モノになるのだろう。
探偵役は認知症を患った主人公の祖父。
主人公である孫が探偵役の祖父へ謎を持ちかけてくる。時には祖父とのコミュニケーションツールであったりもする。
故に謎の内容は取るに足らない事件と思われるものが物語前半にちりばめられている。
途中まで読んだ時点での感想は「このまま最後まで行ったら酷くつまらない物語になる」と思った。
中盤以降から物語の密度が一気に高まり、読み応えが増してくる。
なんとなく散らされていた伏線も一気に回収され、登場人物の心情もきちんと描かれて最終的にはきれいに落ち着いた作品となった。