世界でいちばん透きとおった物語 / 杉井光
SNSで話題に挙がった作品。
ページ数が230ページほどの文庫で読みやすそうだったこともあり購入。
あらすじ
大御所ミステリ作家の宮内彰吾が、癌の闘病を経て61歳で死去した。
女癖が悪かった宮内は、妻帯者でありながら多くの女性と交際しており、そのうちの一人とは子供までつくっていた。それが僕だ。
宮内の死後、彼の長男から僕に連絡が入る。
「親父は『世界でいちばん透きとおった物語』というタイトルの小説を死ぬ間際に書いていたらしい。遺作として出版したいが、原稿が見つからない。なにか知らないか」
奇妙な成り行きから僕は、一度も会ったことがない父の遺稿を探すことになる。知り合いの文芸編集者・霧子さんの力も借りて、業界関係者や父の愛人たちに調べを入れていくうちに、僕は父の複雑な人物像を知っていく。
やがて父の遺稿を狙う別の何者かの妨害も始まり、ついに僕は『世界でいちばん透きとおった物語』に隠された衝撃の真実にたどり着く――。
所感
少し前に読んだ「逆転美人」に近しいトリック本という印象。
「逆転美人」の時に感じたイヤな押し売り感がないし、違和感もないのでこちらの方が好みではある。
愛人の子供だから父親から愛されていないと考える主人公だったが、実際のところ主人公だけのために書かれた小説が存在したことでその想いが間違いであったことがわかる。
簡単に言うとこれだけの話に感じた。
いかんせん本の仕掛けに目が行ってしまい、ストーリーがぼやけてしまっていると思う。
この本の仕掛けを成立させるために作られた設定なのではと邪推が働き、少なからずシラケた感覚を覚えた。
「ウリ」を物語の内容からあまりに遠くに設定すると、どこか薄っぺらい印象になってしまうのだろう。
クリエイターのはしくれとして勉強になった。