
おいしくて泣くとき 森沢明夫著
「プロだけが知っている 小説の書き方」「おいしくて泣くとき」この2作品は、同じ著者(森沢明夫氏)の作品であり、前者のノウハウで書かれた小説が後者という紹介をYoutube動画の中で著者本人が語っている。
もともと私が本を読む目的の一つに ”少しはマトモな文章が書けるようになりたい” という欲求がある。そんなとき、私が最も情景表現が上手いと思っている森沢氏が、このような形の情報を提供してくれている。動画を観るに ”そこは企業秘密で明かせません” 的な事は一切感じられず、全て晒しているように見て取れた。
エンジニアの世界でも同じようにスキルの共有ということはあるのだけど、それができる人というのは公開しても絶対に追いつかれないという自信を持っている人だけだ。だから、このノウハウを手に入れたところで遠く及ばない事は確かなのだろう。
しかしながら、私としては少しでも ”マトモな文章” ”ある程度マトモな表現” ができるようになれば御の字なので、ありがたく読ませていただいた。
中学生の友情と逃避行
「おいしくて泣くとき」で描かれる世界は、主に主人公が中学時代の話。
家が飲食店をやっていて、ボランティアで「こども飯」と称した、所謂、貧困家庭の支援サービスを行っている。
同じ学校に通う幼馴染や同級生の中には貧困家庭に育つものもいて、たびたび「こども飯」を利用している。しかし、それは内緒にしておきたいところがあって、でもどこからかバレてしまって・・・15歳という多感な時期に逃げ場の無い感情が切なく表現されている。
あるとき、自分たちの力だけでは解決できない状況が発生し、主人公と幼馴染は逃避行におよぶ。その光景が蒼く眩しく表現されている。2日間しかない逃避行であったが、それが一部の大人の理解を得たり、心の洗浄ができたりと・・・騒ぎにはなったが後悔は無かった。
時が経ち、窮地に陥った主人公を、若き日の幼馴染との約束が大きな恩恵となって果される。
物理的な充足よりも心が満たされる方が幸福感があるのだというメッセージを感じた。安定の美しい話で、構成もさすがと言うしかない。なんとなく、「キッチン風見鶏」に似ている雰囲気を感じたが、こちらの方がリアリティがあるストーリーだった。どちらも面白いけれど、ファンタジー系が好きなら「キッチン風見鶏」、青春群像劇が好きなら「おいしくて泣くとき」で良いと思う。








